2017年第3回関東ウェーブの会例会記録】

《はじめに》

3回例会の懇談会・懇親会では,スタッフを含め 16 名の方々に参加いただきました。 14 時からの自己紹介では,フリートークに近い自己紹介を行い,その中で次の懇談会で取り上げる話題を募りました。今回は参加回数の多い方がたくさんいらっしゃったこともあり,アットホームな雰囲気の中で話し合うことができました。懇談会では,生き方や家族関係等について,皆さんの経験談を共有しました。また,ウェーブの会に

「躁転した」人が現れたときの接し方について話合いました。

以下は当日のスケジュールと,懇談会で話し合ったことの要約です。

《スケジュール》

14:0015:10 フリートーク自己紹介

15:2015:50 1. 病気などで余裕が見出せない中でも見出せる楽しみや趣味

16:0016:10 2. 記憶障害の原因・対処

16:1016:30 3. 躁うつの波と家族関係について

16:3517:05 4.(会内の)躁転した人の受け止め方・対処法について

17:0521:00 懇親会(買い出し・片付けを含む)

《懇談会で話し合ったことの要約》

 1. 病気などで余裕が見出せない中でも見出せる楽しみや趣味

話題の概要:「楽しいもの」を加えてバランスよく生きていきたいという気持がある。例えば,病気が発覚してからこのようなことを始めて気が晴れたなどという,皆の経験を聞きたい。

皆の経験

1週間か2週間温泉に行く(が,何もすることがないので過眠になったりアルコールを飲んだりしてしまうが)。

・好きな音楽を聴く・歌う・引く,等。自分は気分を落ち着けたいときにはアダージョやイスラエル国歌を聴いている。

・大きい趣味のようなことではないが,銭湯へ行って風呂から上がったあとでテレビを見るなどしている。

・時代劇をずっとつけている。時代劇は音や画面のトーンがうるさくなく一定だし,予定調和的な部分があるので,難しいことを考えなくても心を落ち着けて観ることができる。

TVショッピングやEテレの番組は頭使わないので本当にひどい状態のときは見ていた。

・同居している彼とご飯を作って食べること。毎日行っている当たり前のことだが,余裕がない時にもブレずにできることである。「余裕がないときでもブレずにできる」ことがあることは,自分を安心させ,安定させるために大事なことだと思う。

・コーピングを行う。すなわち,自分がこれをやると楽しい・嬉しいということを100 個くらい具体的に挙げておく。自分の場合は川崎の中華料理屋の麻婆豆腐を食べる,などを挙げている。そして,挙げたことを実際にやってみることで,いらいらした気持が落ち着いてくる。重要なのは,「楽しい・嬉しいと感じること」のディテールを細かく設定しておくこと。例えば「会社帰りにサンマルクでチョコクロワッサンを食べよう」と設定することもよい。

・粕汁など温かいスープを飲むと落ち着く。

・孫と遊ぶことや子どもたちへの読み聞かせ。

・散歩で気分を朗らかにする。

・仕事をしていたときは「ストレス発散」をよくしていた。しかし,仕事を辞めた今はストレスがたまることもなく,嫌なことがあっても2,3日寝たら治るようになった。

・仕事に全力,ではなく,仕事に7割,興味があることや楽しいことに3割にすることも大切なことだと思う。

・自分は人と話すことが好きなので,毎日パチンコ屋の常連のおじいちゃんとしゃべる。

・ブックオフの100円コーナーでCDを探す。

・自分はゲーマーなので,オンライン麻雀などをやっている。チャットでコミュニケーションを取りながら行う麻雀もある。

・好きなドラマのワンシーンだけを何度も観る。同じ音楽を100回くらい聴く。

2.  記憶障害の原因・対処

話題の概要:短期記憶が弱くなっている気がする。物忘れがひどい。年齢的にはそんなことがないし,1年前までそんなことがなかったのに,ついさっきまで行っていたことや約束ごとを忘れてしまうことがある。

参加者13人中9人は弱くなったと感じていた。その中で,薬を飲んでからであると感じていた方が半数ほどであった。

皆の経験

・自分は短期記憶が強かったが気分安定薬を飲み始めてからどんどん悪くなっているように感じる。薬を飲んでからである。アイフォンにメモを取るなどの対処をしている。

・記憶力の低下があるために,復職ができるのかどうかという心配がある。会社や産業医がこの記憶力の低下についてどう思うのか気になる。

・(上記に対して)復職の際にこのことを言わなくても良いのではないか。復職した後で産業医に相談するのでもよいのではないか。

3.  躁うつの波と家族関係について

話題の概要:健常者の旦那さん・奥さんがいる既婚者・または既婚歴のある人に,夫婦仲が変動したことはあるか,また,どうような状況で変動したかを聞きたい。

健常者の旦那さん・奥さんがいらっしゃる方の経験談

・自分立ち夫婦が喧嘩するのは躁のときである。若くて子育てに一生懸命なときはよく喧嘩をした。しかし,自分が躁うつと分かってからは,相手が,自分が怒る理由を聞いてくれるようになった。自分に対する理解をしようとしてくれるようになった。

・自分は,相手に理解してもらうために,まずは気持を書いてみてそのうちのどれを伝えるか考えてから伝えるようにしている。激しい怒りがある時は薬を飲んでから書いてみる,それでも怒りが収まらないときは離れてみる,というような行動を心がけている。

・自分の場合は,相手に怒鳴ってしまったりものを壊してしまったりする。その時は相手も同様に怒鳴ってくるが,相手はある時点で「この人はこういう病気なのだ」と理解し,気持を収めているように感じる。しかし,躁のときはいきなり怒鳴るなどしてしまうので,「病気」とすぐに結びつかないかもしれない。

・自分はうつ状態は理解されているが,躁状態に関しては理解を得られていないと思う。少し声を荒げると,「躁状態では?」と思われている節があるので,相手には言葉遣いなどを丁寧にするよう心がけている。相手は,自分がひどい躁になったら別れると言う。

・相手とつながっていられるのは,相手が自分に対して情を持っているからだと思っている。

 

4.(会内の)躁転した人の受け止め方・対処法について

話題の概要(スタッフより):関東ウェーブは躁転した人が来る・いるのは前提としている。スタッフはそのような人も排除はしない開かれた会にしたいと思っている。しかし,躁転した人が他の人に迷惑を掛け,体調を悪くさせてしまうこともあるかもしれない。そのようなときに,躁転した人に対して我々はどのように受け止め,どのように対処をすればいいのか,皆さんの意見を聞きたい。

スタッフが事前に話し合い一致したこと

・今までもそうしてきたように,会の文化として,躁転している人に対しても話し合いで解決していくことを,会の姿勢としたい。

・一方的に頭ごなしに「やめてください」と言うのではなく,「迷惑に思う人・体調が悪化してしまう人がいるかもしれない」ことを伝えて落ち着かせた上で,躁転した人にも耳を傾け,話し合う。

・躁転した人を一旦連れ出してスタッフが話す。

・スタッフが躁転した人の隣に座る。

皆の意見

・躁転した人の隣に座ったり,話したりすることは,スタッフだけでなく会に来る回数が多い会員ならある程度できるのではないかと思う。

・躁転した人にとっては,「誰と話すか」によって受け止め方が違うと思う。

・躁転した人とも信頼関係を保ち続けながら長い目で付き合っていこう,とスタッフは考えている。今までに,スタッフ以外にも躁転した人と関わってくれた人がいて,その中にはその後も友人として長い目で付き合ってくれている人もいる。

・自分の知っている人は,未治療の双極性障害で,明らかに躁転していた。その人と毎週会っているうちにストレスが溜まったことに気が付いたため,「スルー」するようになった。このことで,スルースキルがついたと思う。ウェーブでも,会の中ではとりあえずスルーで,会の外でスタッフが話会うことは良いと思う。

・会の始まりに,「誹謗中傷や暴言があったときは退席願うこともある」というような,ルールを設けることも必要であると思う。スタッフがホスト感を持って対処することも必要なのではないか,と思う。

・ただ,ルールを入れたとしても躁転して何かをやってしまう人がいると思う。

・躁転した人の特徴としては,自己顕示欲が強い・病識がない・孤独で嫌われてしまう,等が挙げられると思われる。

・躁転した「やべー人」に当たって実害を受けた人がいるか?

・スタッフより:今現在,実際に「迷惑がかかっている」人がいる。過去には,「そのせいで体調を崩した」人がいた。「こういった人には退場して欲しい,こういった人は来ないようにして欲しい」という要望もあった。

・躁グループとうつグループ(下がっている人グループ)に分けて,躁転した人とスタッフを躁グループに入れて,まずは「下がっていて体調を崩しかねない人々」を保護するのはどうか。

・事前のメールで誰が来るか分かるようにして,苦手な人がいれば自己防衛してもらうことにする。

・本当に躁転している人は確実に躁転を否定するので難しい。

躁うつ病の会は,躁の人がいてなんぼで,そのような人の受け止め方で,会の度量

・スタッフより:皆さんがスタッフ以上に対策を考えていてとても参考になる。ただ,

がはかられるとこ

がある。その2つの兼ね合いが大変。皆さんに躁転した人と実

際向き合うことをお願いすることは現実的ではないが,参加者の意識の共有はしたい。

・自分は近い関係の人や,仕事上であれば介入するが,このような(ウェーブのような)場では介入したくない。その意味では,まずはルールを明示するようなことも必要だと思う。

・相手を理解することと,アクションを起こすことの間には大きな壁があると思う。躁転している人と,実際に向き合おうとする人間が少ないということは残念である。自分は,火中の栗を拾うつもりで介入する気持だ。

・躁転した人を受け止める,ということは当たり前である。その上で,ルールが必要だということである。

・この問題は当事者会の本質に迫る問題であると思う。当事者会の中で自治的に制御できるようになることは重要なことであると思う。自分の気持にグサっときてしまうような(自分にとって害のある)人々が来てしまったとして,それでも受け入れるという気持が大切である。

・全体の力で,一人の人間をどうにかする,というようになってしまい,会が分解してしまうことが何度もあったので,それは避けねばならない。

・躁転して問題を起こすということには2つの側面があると思う。1つは,自己顕示欲,自分が認められたいという思いである。もう1つの面は,「ここまでやってはいけないな」というような,「計算をする」頭は必ず働いているという面である。つまり,完全に自分が見えなくなっているわけではないのだから,本気で向き合えば分かりあえるはずである。しかし,これは一朝一夕にできることではないので,一回一回の経験を価値のあるリスクと捉えて,「どこかで分かるはずだ」という観点で接していくことが必要だと思う。

・上のことは,「共存するスキル」であると思う。しかし,個人差があることは,分かっていただきたいと思う。

《終わりに》

今回も,躁うつ病特有の経験や考え方を皆で共有し合うことができました。冒頭で,「会から各々にとって有益なことを持ち帰り,活かすことも大切だ」,という話が出たように,少しでも皆さんの心に響くことや有益なことが得られたのなら幸いです。また,「躁転した人への対処」という,躁うつ病の会では避けて通れない話題について取り上げられたこと,その中で皆さんの考えをお聞き出来たことは,当会の発展につながる大きな一歩であったと思います。

関東ウェーブの会は,今年から当事者会としての会員制へと踏み切りました。当会は,今まで通り会員・非会員問わず,会をすべての躁うつ病者に開かれたものとするとともに,運営主体をスタッフだけではなく,会員の総意として発展させていきたいです。関東ウェーブの会スタッフ一同

次回定例会のお知らせ

2017 年度第4回例会は 71日(土)を予定しています。詳しくは「お知らせ掲示板」を御覧ください。ご参加お待ちしております。 8月は5日(土)を予定しています。基本的に今後の例会は,毎月第一土曜を予定して おります。 お手数ですが,参加の際には参加表明をしていただけると非常に助かります。